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スキーの魅力と、その多様性について

昨日と今日、ふたたび何種類かのスキーを履き比べる機会を得ました。

 ここ数年の間に観られるスキーの多様化には驚くべきものがあります。まさに目を見開くばかり。
 先日も白馬五竜の 『スキースタジアム』 にご協力いただき、二日間で五種類ほどのスキーを履き比べるキャンプをおこないました。
 三十年前なら、スキーの選択肢は非常に幅が狭く、一番の違いはスキーの長さと固さくらいではなかったでしょうか。もちろん、「K2が好き」 とか 「ロシニョールが好き」 とかいうブランドへの嗜好はありましたが、スキー自体の形状や性能にそれほど大きな差はなかったように記憶しています。
 ところが、今のスキーを観て下さい。「これが同じスキーなのか」 と戸惑うほどさまざまなスキーが並んでいます。

 たとえばスキーの太さです。
 今いう 「ふつうのスキー」 とは、いったいどれくらいの太さを指すのでしょう。
 細いスキーの代表格ならモーグルスキーに違いありません。トップの太さで100ミリを切るくらい。センター幅で65ミリくらいが一般的モーグルスキーでしょう。
 太いスキーの代表格ならパウダー用になります。メーカーにもよりますが、トップの太さで150ミリを超えるものすらありますし、それくらい太いスキーになるとセンター幅で130ミリを超します。たぶんメーカーを探せば、もっともっと太いスキーを作っているところも見つかるでしょう。

 サイドカット(スキーをたわめずに描く回転弧)も、小さなものだと半径11メートルくらいのスキーから、大きなものだと30メートルを超えるスキーまであります。大回転用のスキーはルール改正で近々半径40メートルくらいになるという話も聴きました。つまり三倍以上違うスキーが存在することになります。

 次はスキーの反りについて観てみましょう。
 スキーはふつうわずかに反っています。その反りを 『ベンド』 と呼びますが、ベンドのあるものから今では逆反りしたもの (ロッカー)も販売されています。
 今日わたしが乗ったスキーの一台は K2の 『プレス』 というスキーで、これにはまったくベンドがありません。スキー自体が完全なフラットで、トップとテール部分から三十センチくらいのところから、かなり逆反りしています。パークでジブと呼ばれる人工物を楽しむスキーで、やや細め(トップ113ミリ センター85ミリ)で、サイドカットが20メートルというスキーでした。驚いたことに、このスキーはジブだけでなく、コブも最高だったのです。細めで柔らかく、サイドカットが緩く、ベンドがないロッカーなので、コブに良いだろうとは思っていました。ところが、予想を遙かに超えるほどの素晴らしさに、正直驚かされました。

 昨日はプライムウエアの撮影のため、大好きな来期モデル 『ヴェロシティ』 で滑りました。
 『ヴェロシティ』 はとても敏感で切れるため、コブを滑る時には真剣にならざるを得ません。トップエッジが鋭く、ポーパスターン (モーグル競技に観られる特殊な滑走ライン/ニューライン)で滑ることがたいへん難しいのです。それにひきかえ、プレスは何の苦もなく、ニューラインに入っていきます。しかも鼻歌を歌えるほど気軽にニューラインをトレースして行きます。
 思わず、「昨日のコブの撮影に、これを使っていたら」 と考えてしまいました。そうすれば、もう少し上手そうな写真が撮れたはずですから…。

 同じスキーというカテゴリーにあっても、パウダー用のロッカースキーとスラロームスキーでは、まったく異なった性格を持っています。
 ジブ用のスキーと高速カーヴィングスキーも、まるで異なります。
 異なったスキーには、とうぜん異なったテクニックが必要になります。

角皆優人(2009-06-15)「指導とか上達ということ」
https://ameblo.jp/tonakai-no-hitorigoto/entry-11228184206.html
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角皆 優人

フリースタイルスキーヤーであり作家の「角皆優人」 素晴らしいスキーの世界を、少しでも多くのみなさんに知っていただきたい。そのため、スキー技術をお伝えすることが、自分の使命の一つであると信じて活動しています。

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