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父親というもの

もう二日前の話になりますが、今シーズン初めて英語でレッスンをおこないました。

受講頂いたのはアメリカ人の元フィナンシャルプランナー。42才の長身でとてもハンサムな男性でした。

さまざまな話をしているうち、「どうしてエアレッスンを受けたいと思われたのですか?」と聞くチャンスがありました。

すると、次のような答えが返ってきたのです。

「…実は、ティーンエイジャーの息子と、うまくコミュニケーションがとれていないのです。いろいろと方法を考えたり試したりしたのですが、あまりうまく行かず、『息子が大好きなスノーパークで一緒に遊べたら、息子も心を開いてくれるのではないか…』と、そう考えたのです」

しっかりとわたしの瞳をのぞき込みながら、こう話してくれた彼の言葉に、深く胸を打たれました。

反抗期の息子と会話するため、エアレッスンに入ったお父さん…。

どれだけの日本のお父さんが、そこまで考えるでしょう。

ふと、アメリカの底力を見せつけられたように感じました。

アメリカはたくさんの問題を持つ国ですが、こうした人がいることも事実なのです。

そんな彼に、こう聞いてみました。

「今回の世界的な金融不況はどれくらい続くと考えますか?」

すると、次のような答えが返ってきました。

「みなさんが考えているより、傷はずっと深いのではないでしょうか。この傷はアメリカの醜い面が招いてしまった不幸です。アメリカの悪いところ、強欲や、金権主義などが、停まることを知らず進んだ結果です。たぶん多くの人が言っているような1年での回復は難しいと考えます。1年は今より悪くなり続け、最低でも2年以上の不況が続くでしょう」

こんな倫理観が高く、家族想いの人が、フィナンシャルプランナーを務めていたと云うことも、アメリカの不思議ですね。

ちなみに、奥さんからはこう云われたそうです。

「フィナンシャルプランナーをしているあなたは、幸せに見えないわ。もう仕事はやめるべきよ。愛するあなたには、なにより幸せでいて欲しいから…」

日本にも、人生を真っ向から見つめるこんな家族が増えて欲しいものです。

角皆優人(2002-04-02)「ソルトレイク・オリンピックの裏側で」
https://tsunokai.org/Ski_Essay/SaltLake_Olympics.htm
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角皆 優人

フリースタイルスキーヤーであり作家の「角皆優人」 素晴らしいスキーの世界を、少しでも多くのみなさんに知っていただきたい。そのため、スキー技術をお伝えすることが、自分の使命の一つであると信じて活動しています。

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